社会人基礎力の知識


社会人基礎力とは

「社会人基礎力」は、経済産業省の「社会人基礎力に関する研究会」で「職場や社会の中で多様な人々と共に仕事をしていくために必要な基礎的な能力」として検討され、「前に踏み出す力(アクション)」、「考え抜く力(シンキング)」、「チームで働く力(チームワーク)」から構成されています。

1.前に踏み出す力(アクション)
「前に踏み出す力(アクション)」は「一歩前に踏み出し、失敗しても粘り強く取り組む力」と定義され、「主体性」、「働きかけ力」、「実行力」という要素で構成されています。

1-1.主体性
「主体性」とは「物事に進んで取り組む力」と定義されています。

仕事では自ら進んで取り組む姿勢が問われます。
ただし、「社会人基礎力」で求めているのは姿勢でなく、力そのものです。
指示がなければ動かないでは困ります。
自ら「進んで取り組む」のは当たり前のことです。
では、本当に指示がなくても行動できるのでしょうか。
「指示がなかったから行わなかった」
「会社の方針が具体的でないので、行動できない」
という話も耳にします。

組織はメンバーに役割を分担し、各メンバーは割り振られた役割を遂行します。
組織のトップは方針、目的、目標などを検討し、下位の組織ではそれらを達成するために具体的な行動を検討します。
さらに、具体化された行動目標は各メンバーに割り振られ、これを受けたメンバーは目標達成に向けて自分の行動を決定します。
このように組織では、トップから下位のメンバーに至るまで、全員が各ポジションに応じて自分の役割をはたします。
リーダーから指示されて、それにしたがい仕事を行うのは初期の段階です。
自分がリーダーになれば、組織の目標を達成するために具体的な行動を考え、実行しなければいけません。
組織のポジションに応じてメンバー一人ひとりが具体的な行動を考え、進んで行動することが重要です。
1-2.働きかけ力
「働きかけ力」とは「他人に働きかけ巻き込む力」と定義されています。

組織では、指示や命令のようにトップダウンで一方的な働きかけもあれば、メンバーと自由にコミュニケーションを交わして協力関係を築く働きかけもあります。
メンバー同士の指示や命令は、相手の反発を招き、双方のモチベーションを低下させ、また、仕事の干渉につながる危険があります。
一方的な働きかけでなく、相互に働きかけて協調関係を築くことが大切です。
たとえ意見が折り合わなかったとしても互いの意見を尊重し、自由に意見交換ができる関係をつくっておくことが必要です。
また、人を巻き込むためには、日頃から真摯な態度で接することも大切な要素です。
1-3.実行力
「実行力」とは「目的を設定し確実に行動する力」と定義されています。

「目的を設定」することも「確実に行動する」ことも大変難しいことです。
やってみないとわからないという不確実性が存在し、うまく行かなければ目的そのものの修正も検討しなければいけません。
「実行力」には目的と行動の調整機能が必要です。
途中で目的や目標の達成状況をチェックしながら、目的の達成は可能か、追加対策は必要か、目的や目標の見直しは必要かなど、見直し、調整を行いながら、成果に結びつけることが重要です。
2.考え抜く力(シンキング)
「考え抜く力」とは「疑問を持ち、考え抜く力」と定義され、「課題発見力」、「計画力」、「創造力」という要素で構成されています。

2-1.課題発見力
「課題発見力」とは「現状を分析し目的や課題を明らかにする力」と定義されています。

「課題」には組織的に取り組む「課題」もあれば、個人的に解決が必要な「課題」もあります。
売り上げの増加、経費の削減、仕事の効率化などが「課題」として思い浮かびますが、これらはどちらかといえば組織の「課題」です。
「課題発見力」が求めているのは組織力でなく個人の力です。
個人の力を上げるには、 小集団活動などで活用されている問題解決手法を身につけることが効果的です。
現状を把握して、それをもとに分析を行います。
その結果から問題を抽出して、取り組むべき「課題」を選定します。
つぎのステップは進め方の事例ですが、「課題」を明らかにするために何が必要かよく考えることが重要です。
  • 現状の把握
  • 把握した情報の整理、分析
  • 問題の抽出
  • 取り組むべき課題の選定
  • 達成すべき目標値の設定
  • 問題解消のための構想づくり
2-2.計画力
「計画力」とは「課題の解決に向けたプロセスを明らかにし準備する力」と定義されています。

問題解決プロセスにおいて計画のウエイトは高く、成否の鍵を握っています。
計画立案の段階では、達成すべき目標値、目標達成までの期間、メンバーの数・力量・経験など多面的な検討を行い、見落し、漏れがないようチェックします。
しかし、この段階で結果まで見通すことは困難で、実施した結果をチェックして、プロセスの途中で計画の見直しができるような調整機能を設けておくことが重要です。
実施した結果と目標値の間に大きな差が生じたり、そのおそれがあるときは、目標値やスケジュールの見直しなど柔軟な対応を行うことで、計画の不備を補うことが可能です。
2-3.創造力
「創造力」とは「新しい価値を生み出す力」と定義されています。

仕事には創意工夫が不可欠です。
先入観にとらわれない柔軟な発想が必要です。
ひらめきを大切にして、それを効果的に仕事に活用しなければいけません。
ひらめきといっても、単なる思いつきから知識や経験に裏づけられた直感的なアイデアまでさまざまです。
活用するに値するひらめきかどうか見極めることも大切です。
アイデアを思いついたときは、気持ちの高揚もあって非常によいと感じても、一晩過ぎるとたいしたことないと感じることもあります。
一見すばらしいと思われるアイデアであっても、ある程度の時間をおいて見直すことも必要です。
時間の経過とともに冷静な判断ができるようになります。
「想像力」を単なるひらめきで終わらせないために、日頃から問題意識をもって仕事に取り組み、「自らの仕事は自ら改善する」という姿勢をもち続けることも大切です。
3.チームで働く力(チームワーク)
「チームで働く力」とは「多様な人々とともに、目標に向けて協力する力」と定義され、「発信力」、「傾聴力」、「柔軟性」、「情況把握力」、
「規律性」、「ストレスコントロール力」という要素で構成されています。

3-1.発信力
「発信力」とは「自分の意見をわかりやすく伝える力」と定義されています。

自分の意見を相手に伝えることは重要なことですが、一方的に相手に伝えて、相手が理解できないのでは意味がありません。
相手が理解できなければ相手からの返信も期待できません。
コミュニケーションは双方向のやりとりで成り立っています。
相手の考えや気持ちを理解して、相手の状況にあわせてカスタマイズしながら発信できるようになることが、「発信力」の向上につながります。
3-2.傾聴力
「傾聴力」とは「相手の意見を丁寧に聴く力」と定義されています。

「傾聴力」のポイントは相手の意見に向き合うことです。
聴く姿勢も大切です。
情報を伝える側も受けとる側も互いに言葉だけでなく、表情やしぐさなども観察しています。
感情的になったり、無視したりすれば、相手のモチベーションも低下します。
聴くときは先入観や思い込みを排除します。
相手の発言を素直に受けとめ、自分が理解したことを相手に伝えながら、相手の意見を正確に把握するようにします。
なお、正確に把握するということは、録音、録画のように機械的に記録することではなく、相手の考えや気持ちを理解することです。
言葉尻をとらえたり、間違ったところをチェックしたりして指摘することではありません。
このような行為を意図的に行う人もいますが、そのような人に対しては、感情に流されないよう注意することが大切です。
3-3.柔軟性
「柔軟性」とは「意見の違いや立場の違いを理解する力」と定義されています。

組織の一員として仕事をする場合、リーダーや各メンバーの役割や立場の違いを認識して、リーダーや各メンバーから発信される意見とそれぞれの立場を結びつけて理解することが必要です。
組織の方針や目標を重視して、立場上個人的な意見を控える人もいます。
また、メンバーの気持ちを代表して発言する人もいます。
どの意見が正しくて、どの意見が間違っていると評価しがちですが、まずは意見の違いを正確に理解することが重要です。
こうすることによって、誰がどのような立場でどのような意見を伝えようとしているのか知ることができます。
また、組織内の自分の位置づけを客観的に認識して、必要な意見が形成できるよう努力することも大切です。
3-4.情況把握力
「情況把握力」とは「自分と周囲の人々や物事との関係性を理解する力」と定義されています。

組織で働く場合、組織や他のメンバーとの仕事上の関連性を正確につかむことが重要です。
組織は各メンバーに役割を分担します。
メンバーはその役割にしたがって割り振られた業務を実行します。
メンバーは割り振られた業務に専念する一方、業務に関連する周囲の状況に気を配り、必要に応じて他のメンバーの仕事を支援します。
組織において役割分担が十分に検討されていたとしても、詳細な役割まで想定することは難しいのが現状です。
想定になかった仕事が発生したり、新たに他のメンバーとの連携が必要になったりします。
メンバーはこのような状況の変化を正確に把握して適切な行動をとることが求められます。
自分だけ仕事がすめばそれでよいという考えは組織にひずみを生じさせます。
「情況把握力」は周囲の空気を読む力ではありません。
自分の位置づけ、他のメンバーとの関係を認識して、周囲の環境の変化を的確につかみ、適切な行動を選択できるようになることが重要です。
3-5.規律性
「規律性」とは「社会やルールや人との約束を守る力」と定義されています。

「規律性」は、文字どおりルールやマナーなど組織の規律を守る力です。
ルールを守るのは当たり前と思われがちですが、それほど単純なものではありません。

たとえば仕事には期限があります。
期限までに仕上げることは組織を円滑に運営するために不可欠で、大切なルールのひとつです。
そのためには知識や経験が要求されます。
知識や経験の不足が懸念されれば、知識を習得しながら問題解決にあたったり、他のメンバーに応援を依頼したりするなど必要な措置を講じなければいけません。
さらに、約束の期日までに仕事が仕上がらないおそれがあるときは、当日になって関係者に連絡するのでなく、事前に通知して会議や報告を延期することも必要です。
自分の力不足によって大勢の人に時間のムダが生じます。
「規律性」は責任を伴います。
単にルールを守るだけでなく、組織の一員として組織を円滑に運営するために何が必要か考えることが大切です。
3-6.ストレスコントロール力
「ストレスコントロール力」とは「ストレスの発生源に対応する力」と定義されています。

社会人は仕事の期限、人間関係など多くのストレスを抱えながら働いています。
時にはプレッシャーに押しつぶされます。
ストレス耐性という言葉があります。
ストレスに対する耐性は個人差が大きく、同じストレスであっても、体調を崩しやすい人もいれば、心身にあまり影響が現れない人もいます。
『私がこんなに頑張っているのだから、あなたももっと頑張って。』と自分を基準に比較することは、必ずしも正しいことではありません。
自分のストレス耐性を知り、ストレスと向きあい、うまくコントロールすることが必要で、ストレスをため込まないことが大切です。
ストレス解消法はさまざまですが、自分にあった方法をみつけることが必要です。
また、ストレスから冷静な判断ができず、相手に厳しくあたったりすることもありますが、過度の言動はハラスメントにつながる危険がありますので注意しなければいけません。
互いの人権を尊重して、健康的な生活が送れるよう互いに配慮することが大切です。